2009年7月12日日曜日

市営北新開荘



ツインコリダー数: 1棟
愛知県名古屋市瑞穂区新開町
昭和52年築 / 7階建82戸

熱田神宮前より山手グリーンロードを東進、新堀川を越えて2ブロック目を右折して南に3ブロックほど歩くと、上の写真のような市営北新開荘の階段状の北面が見えてきます。
名鉄堀田駅と神宮前駅の中間ぐらいに位置するのですが、堀田駅からの方が分かりやすいかもしれません。

名古屋の市営住宅は、建物の規模に関わらず、○○荘という名前が多いです。



↑北面のアップの写真です。正面から北面の全景を撮りたかったのですが、すぐ近くに民家があるので、引いて撮ることができませんでした。

それはさておき、この北新開荘は7階建ての82戸、ツインコリダーとしてはとても小さいです。
そして、北面が階段状というのが、メゾンっぽさを醸しています。

ツインコリダーは高層で住戸をこれでもかと詰め込んでいるのがほとんどで、小型の住棟もなくはないのですが、ここまでこじんまりとしたものは非常に珍しいと思います。



↑北面の下層部です。
内部が暗く、慣れないとちょっと怖いぐらいなのですが、これは吹抜け自体の面積と、開口部が狭いために採光が少ないからだと思います。
それにしても、側面が凹んでいるというのは、僕にとって魅力あるポイントです。



↑ほら、かっこいい!
スターソルジャーとか、シューティングゲームの舞台のようです。
というか、このツインコリダー側面の凹みに対して、呼び名を付ける必要を感じるので、考えてみたいと思います。

しかし、この部分に対するネーミングは難しいです。
僕は、「側面が凹んでいる」とよく表現していますが、正確に言うと、「側面の住棟連結部が凹んでいる」わけで、それは連結部ではない住戸部分が出っ張っているとも言えると思います。
つまり、見方によっては、凹みとも出っ張りともとれるわけです。

しかし、クローズアップしたいポイントとしては、凹んでいるととれる部分のウエイトが大きいので、やはり「凹み」に対して、言い得て妙な名前を付けたいと思います。

・・・・。
決めました。
これから、ツインコリダー側面の凹みのことを「ピット」と呼ぶことにします。
ピットとは、英語で縦穴を意味します。縦穴の断面のように見えるのと、SFに出てくる宇宙船やレーシングカーのピットのように見えるのとで、これを呼称とすることに決めました。
こんなことを勝手にしていいんだろうかと思いますが、このブログでは少なくとも「ピット」と呼び続けることにします。
だって、いちいち「側面の凹んでいる部分」とか言うのが面倒なので。。(笑)
建築用語として既に呼称があるかもしれませんが、今のところ調べがつかないので、「ピット」で行きます。
凡例として、「北面には深いピットがあります。」「こちらの側面は、見事にピットインしています。」など。

ああ、ついにやってしまった・・・(笑)。



↑とても小さな、シンプルの極致を行く吹抜けです。幅が狭く、廊下も短い!



↑でも、まごうことなき、立派なツインコリダーです。
左側1階の軒に這い伸びるステンレスの配管がかっこいいです。



↑1階の集会所も、シンプルの極致を行っていると思います。
一切の無駄がありません。



↑たまにはこんなアングルも。
ツインコリダーの利点の一つとして、構造上の防犯性の高さがあると思います。
廊下が向かい合っているので、違う階の視認性も高いのです。
特に、上層階の住戸からは、向かいの住棟の1階の廊下まで見通すことができます。
最近の片廊下型のマンションにはない防犯上の利点だと思います。



↑南側の側面はフラットで、凹み・・・否、ピットがありません。
2本の廊下の突き当たりに開口部が設けてあります。
採光を少しでもよくしようとしているのだと思います。
それにしても、小さいながらも、マッシブな面構えを持ったツインコリダーだと思います。



↑画像をクリックして拡大表示して見ると分かるかと思いますが、手前の花壇が小さいながらも綺麗に整備されていました。
ここの花壇が住民の方の手によるものかは分かりませんが、公営住宅でも、自治体ではなく住民によって上手に手入れされている花壇をよく見かけます。
そういった花壇を見る度に、どこか温かい気持ちになります。



以上、名古屋市営北新開荘でした。

2009年7月5日日曜日

公団九番団地



ツインコリダー数: 2棟
愛知県名古屋市港区九番町1丁目
昭和49~54年築

今回は、公団でしかも名古屋のツインコリダーを紹介します。

この九番団地は、ツインコリダー以外の住棟も多く、そのどれもがとてもユニークなデザインになっていて、とても心惹かれる団地の一つです。



↑1号棟と2号棟がツインコリダー型、4~6号棟はスキップフロア型、その他は全て片廊下型です。
ここでは紹介しませんが、この団地のスキップフロア型住棟は、中高層で非常に見応えのある質感を持っています。さらに、超長大な3号棟のスケールも圧巻ですし、折れ曲がった8号棟のバルコニーデザインも素晴らしいです。



↑まずは、長大な1号棟を北側から見てみましょう。
まず目を引くのは、側面中央の左側の銀色の配管でしょう。おそらく後付けなのだと思いますが、それが返ってメタリックなかっこよさを伴って、側面のデザインを引き締めているように感じます。
レンガ色のタイルの壁面を目の粗い格子状の白タイルが引き締め、メタリックな住棟番号でトドメをさすという、非常に男前な側面を持ったツインコリダーだと思います。



↑少しアップで見てみましょう。
やはり、配管と住棟番号のメタリック感が、全体を引き立てていてかっこいいです。



↑同じ住棟の南側は、配管がありません。
多分、こちらが本来の姿なのだとは思いますが、個人的には、メタリック感がない分、物足りない気がしてしまいます。



↑1号棟の吹抜け内部です。
1階部分が駐輪場になっているツインコリダーは結構あるのですが、このように吹抜けスペースがきれいに確保されているケースは、あまり見ないです。
この九番団地の吹抜けは、1階部分が水平方向に開放されているので、横からも光が入って明るいです。

同じ名古屋市内でも、市営住宅のツインコリダーは、1階部分が住戸になっていて吹抜けスペースが駐輪場になっているケースが多いです。
大阪でも、市営は1階に住戸があるツインコリダーが多く、公団では1階に住戸がないものが多いです。
推測ですが、ツインコリダーの1階部分には住みにくい要素があって、公団はそれに対応した住戸レイアウトを考えたのかもしれません。



↑長大なツインコリダーの吹抜け部は、やはりこのアングルに迫力が出ると思います。
正面奥の4つずつ並んだ窓に、九番らしいデザインの洗練を感じます。



↑実は、この1号棟の吹抜け部1階には、集会所がありました。
その名も、「九番集会所」。
ネーミングから類推するに、この1棟だけの集会所というわけではなさそうです。
団地の集会所をわざわざこの吹抜け部中央に持ってくるセンスというか、省スペースのアイディアというか、僕にその発想はなかったので、とても新鮮でした。



↑こちらは2号棟の北面です。
1号棟の側面とは何から何まで全然違います。ガンダムとコアファイターぐらい違うと思います。
1号棟のあの洗練された凝ったデザインとは違い、のっぺりとしていてシンプル、素朴さを感じます。
適当なデザインの超合金ロボットに見えなくもないですが、どこか憎めないのが不思議です。
窓の配し方など、投げやりな雰囲気すら感じないでもないですが、これはこれでワビサビの味わいがあるような気がします。
素朴な余白の取り方にも、独特の味わい、趣きを感じます。



↑この素晴らしい九番団地で唯一残念なのが、このゴミです。
収集時間外に大量投棄され、ゴミが集積場所から溢れ出し、ハエやカラスがたかっていました。
他の集積場所では、もっと酷い状況もありましたが、さすがに写真に収める気にはなりませんでした。
どうも、九番団地には、外国人(主にブラジル人だと思われます)の住人が多いようで、彼らの公衆道徳が日本のものとは異なるのかもしれません。
住民同士で解決する方向も必要かもしれませんが、まずURが率先して課題として取り組む必要があるように思いました。



↑2号棟の吹抜け内部です。
これまた1号棟とは全く違うので、驚きました。
なんと中に街灯があります。
さらに、こちらはなぜか、1階の左右にフェンスが張られ、自転車が吹抜け部の屋根のあるわずかなスペースに締め出されています。他にも、停めきれない自転車が、廊下や共用スペースに置かれています。
ただ、どこかあっけらかんとした明るさがあって、雰囲気はよかったです。
勝手な想像ですが、住民の楽天的な性格が出ているような、そんな印象を持ちました。



↑小さめのツインコリダーは、吹抜けの全景がカメラに収まります。



↑2号棟の南面は、北面の投げやりな感じとは違って、少し凝ったデザインになっていました。
小学校に面しているので、少し見栄えに気を遣ったのでしょうか・・・。
とはいえ、北面の味わい深さといい、吹抜け内部の街灯といい、僕はこの2号棟がかなり気に入ってしまいました。



↑何だかファクトリーな感じのポンプ室?とツインコリダーのバルコニー面。
大きく育ったクスノキのヴィヴィッドさと、工場っぽい殺風景さとが同居していて、それがイイカンジです。



↑ワールドカップの時期に、もう一度来て見たいと思いました。

以上、公団九番団地でした。