埼玉県川口市芝園町
ツインコリダー数: 2棟
形状区分: 両面ピット / ツインピット / 青タイル / 内部プレイロット
供給区分: 公団
築年代: 昭和53年
撮影: 2012年11月
いやー、かっこいいツイコリですね。
典型的なツインコリダーでありながら、有無を言わせぬ存在感とクールさを持ってますね。
それもそのはず!
この団地は、あの大友克洋の傑作漫画 「童夢」 の舞台のモデルなのです。
って、断定しちゃいましたよ、この人。
まあ、いろいろ特定しましたから間違いないです。
見どころ満載なので、今回は特大版でお送りします。
はてさて、上の写真を見るとですね、面白い特徴に気づきます。
ショッピングセンターの上にツイコリが建ってるんですよ。
(正確に言うと、建っているように見える、です。)
ツイコリの1階に店舗というパターンは多いんですけど、
縦横に広がるショッピングセンターの上に2層ピロティ型のツイコリがどーん!
みたいに見える。
どういうことかと言うとですね、↓
↑1階部分がショッピングセンターと同じ高さの階で、住戸のないピロティ。
そして、2階部分もピロティ。
つまり、2層ピロティ型のツイコリにショッピングセンターが連結しているという。。
(ピロティと呼ぶには多少語弊のある空間構成なので、共用スペースとでも呼ぶのが妥当かもしれませんが、
便宜上、この記事ではピロティという呼び方で統一します。)
こんなの初めて見ましたデス!(何がデスだよ)
構造がこうなることで、独特の面白さ・美しさを醸すのデスよ。
まあ、見てください。(えらそうに)
↑何と、ショッピングセンターの屋上がツイコリの2階にアクセスしている!
あたかも、ペデストリアンデッキのように!
ペデ、ペデス・・・何?
気にしないでください。言いたかっただけです。
2階から超開放的なデッキに出られる、みたいな感じです。
そして、ツイコリの妻側、すてきですね。
ピット部分に縦にスリットが2本ありますよね。
つまり、これツインピットなんです。
ツインピットは、3年前に勝手に考えたオリジナル造語です。
こういう中二臭い用語を考えるのが大好きです。(すみません)
ともあれ、ツインピットがあると、
妻側の外観が、シュッとした締まりのある風情になると思うのデス!(だから何がデスだ)
そして、住棟番号とカモちゃんマークも、良いアクセントになってますね。
で、ですよ。
「童夢」を読んだことのある方、何か気づきません?↓
↑どーん!
そうです、この住棟の屋上って、
「童夢」で超能力老人チョウさんと超能力少女エッちゃんが、
最初に対峙した場所なのですよ!
しかも、見開き2ページまるまるこのカット!(童夢単行本 p116, p117)
ここ使う!?普通!?
大友克洋先生は、ツイコリの造形美を熟知してるとしか思えない!
このカットでの二人の対峙シーンから、
あのSF漫画史に残る、超能力バトルシーンの火蓋が切って落とされたわけです!
ツイコリ愛好家として僕は、胸が熱く震えましたよ!
そして、このツイコリがSFの舞台としていかに素晴らしいか、
ロケーションを見れば納得せざるを得ません。。↓
↑高層住棟に囲まれている!
三方を山に囲まれた天然の要害、とかよく言いますけど、
ここは、三方を高層住棟に囲まれた人工の要害!
得も言われぬ造形美を生ずるロケーションなのであります。
僕はこの住棟に挟まれた空間を飛んで行きたい!舞空術で!
とまあ、興奮を鎮めるためにも、
さっき言ってた2層ピロティを見てみましょう。
↑ここは2層目。ダンジョンみたいでかっこいい。
つまり、ショッピングセンターの屋上デッキにアクセスしている2階です。
何だか意味ありげに穴が空いてますけど、
上階の吹き抜けからの採光を1階まで貫通させる試みのようです。
そして、床も壁面も全てタイル!良いタイル!
好きな食べ物は何かと訊かれたら 「タイル!」 と答えてしまうほどの
タイル好きの僕としては、たまらないものがあります。
同じ形のタイルを敷き詰めた幾何学的美しさよ。(うっとり)
昭和40~50年代築のビルや高層団地のタイルには、独特の美しさを感じます。
せっかくですから、穴のところを見上げてみましょう。↓
↑上には半透明の波板が!
僕、波板も大好きなんですよ!
何とも言えない詫びた質感、うっすら漏れる光。
やばい、何だこのツイコリは。
僕を萌え死にさせる気か。
名残りを惜しみつつ、1階のピロティに降りてみましょう。↓
↑ここは1層目。ダンジョンみたいでかっこいい。中ボスとかいる部屋ですよ、きっと。
さっきの楕円形の穴が天井に見えてますね。
採光というよりは、圧迫感を軽減するためなのかもですね。
何か、和風の引き戸が見えますが、自治会の事務所のようです。
ちなみに、2階には集会所もありました。
ではここで、壁面を見てみましょう。↓
↑ニャンだこれは。
てんてー!ここに天才がいますよ!てんてー!
何がてんてーですか。
何というオモシロ動物。
真ん中の猫?なんて、体がイカみたいになってますからね。
デフォルメの仕方が、いちいち神がかっています。
真の天才は、世に出たがらないものです。(ほんとかよ)
その意を尊重して、この名画達をそっとしておきたいと思います。
素晴らしいダンジョンの1層と2層の名残りを惜しみつつ、
いよいよツイコリ上階の吹き抜けを見ていきましょう。↓
↑いきなり最上階。ほれぼれする塔屋の造形ですね。
外階段が2層ある塔屋は、なかなかスペシャルです。
シンメトリックに斜めのラインを成す壁もすてきです。
↑お馴染み、正規ビュー。
このパースの効いた空間美はツインコリダーならではですよね。
縦に並ぶ配管もたまらん。。
↑吹き抜けを見下ろす。
アーチを描く波板とその周囲に巡らされた配管。。
もう、萌えるポイントしかないじゃないですか!
・・・。
というわけで、ツイコリ1棟目を紹介しました。
え?2棟目も紹介するの?
どうせ、1棟目と同じようなのでしょう?
と、思ったアナタ!甘い!
・・・とかいうノリツッコミ的展開はくどいので、さっさと2棟目紹介しますね。↓
↑右側に見えてるのが、2棟目のツイコリです。イナズマラインがかっこいいですね。
このツイコリ、右と左で高さが違いますよね。
右が8階建て、左が10階建て。
で、真ん中の青いエレベーターコアの屋上が斜めに切ってあって、
全体のスカイラインが美しくデザインされているように見えます。
まあ、この高さの違いがまた面白い景観を生んでいるのですが、
それは後ほど。
この妻側を見る限りでは、こじんまりしたツイコリなのかなーと思いきや。
実に長大なスケールを持った大きなツイコリでして。
↑左側がツイコリ。バルコニー面の外観です。
この2棟目のツイコリの長さは、写真で見えてる範囲の倍ぐらいあります。
高さは低めですけど、長~いんです。
で、ですよ。
ここは、「童夢」p.122の1コマ目と同じ構図の場所です。
パースの効いた特徴的なカットだったので、
モデルがあるはずだと思って探したら、見つかったわけです。
写真じゃわかりにくいけど、この日はずっと雨でした。
でも、心折れたりしませんよ!そんなことでは!
(結構キツかったですけど。。)
そんなこんなで、
童夢の舞台のモデル特定をすべく歩き回っていたら、
こんなのに遭遇しました。↓
↑あら可愛い。
これはアニマルライドなのか、オブジェなのか。
ゴマちゃん風な、アザラシの赤ちゃん風な。
ペイント次第で雪だるまにもなるところを、敢えてアザラシ。
↑そんな目で見つめられましても。。
目で何かを訴えかけてくるゴマちゃん。キューキュー!
きっとこれは、「雨に負けないで、ツイコリめぐり頑張ってね!」 というエールに違いない!
と思うことにして、先を急ぐのでありました。
で、ですね。
2棟目のツイコリは、1階がピロティで駐輪場になってたり、
広場的なスペースになってたりします。↓
↑えっ。
タイルでボールを当てる的みたいなのが描かれてます。
当初はそういう目的だったけど、後からフェンスで覆ったのだろうなぁと。
昔は、壁に子供がボール投げるとか当たり前だったんですよね。
けど、年月が経つと、音とか振動が問題になったりしてくるわけです。
まあ、時代の流れと言いますか。
仕方ないですね。
って、全部想像ですけど。
そんな想像力を掻き立てられる、すてきな模様とフェンス。
で、結局これ何なのよ。
さらに、そばにあった柱を見ると。。。↓
↑ころばぬさきのつえ。
いろはがるたですよ。唐突に。
ここまでやるなら絵があってもよさそうなものだけど。。
中央の空白の部分に昔は絵があったけど、経年で退色して消えたのかも。。
ともあれ、団地に住んでる子供は嫌でもこのコトワザを覚えることでしょう。
教育熱心な団地。
で、ですよ。
ここに 「こ」 があるということは、団地内に50音全部あるということなのかと。
さすがに探すのやめました。ええ、ヘタレですよ何とでも言え。
ここはこのぐらいにして、
ツイコリ内部を見てみましょう。↓
↑ビューティフル。
公団の高層住棟に時々見られる、てかてか青タイル。
この住棟では、エレベータタワーの外壁に使われてました。
今、UR賃貸の団地では、改修で外壁タイルが失われる傾向にあります。
何を隠そう、僕も外壁タイルが美しいツイコリに住んでいるのですが、
いつ無くなるかとビクビクしているこの頃です。
こういった美しい特徴は、住民にとっても或る種の愛着・誇りだったりもすると思うのですが、
勝手ながら残念な流れだと思うのであります。
ここのタイルも、次に行くときまで存在するかなぁと思いながら眺めたのでした。
気をとりなおして、吹き抜けを見てみましょう。↓
↑廊下の腰壁の凹凸が、クールな景観を生んでいますね。
住棟の高さが比較的低い場合は、吹き抜けの採光がよくなるので、
植栽がそこそこ育ちます。
ここは、「童夢」p.83の最後のコマに描かれている住棟の1階部分になります。
ここをモデルに選ぶのも、ツウだなーと。
(僕の方が後に行ってるわけだけど)
↑雨に濡れたエレベータータワーの青タイル。
↑廊下は柵じゃなくてコンクリの腰壁ですが、わりと明るいです。
童夢では、この廊下の角に佇む殉職した山川刑事部長の幻を、
部下の高山刑事が目撃していましたね。
↑高さが違うので、向かいの廊下側の屋上が見下ろせます。
ツイコリの屋上は、高いフェンスで囲まれていて昔は自由に入れたところが多いです。
現在はここも含めて、ほとんどのツイコリで立入禁止になっています。
ので、このアングルが見られるのはレアです。
↑なんと、ツイコリの廊下の中ほどに唐突に、1階飛ばしでこういう空間がありまして。
プレイロットになっているようです。
こんなツイコリ見たことない!
あと、何気に向かいの住棟のバルコニーに住棟番号があるのもレア。
↑出たぁああああああああああああああああああ!
「い」を偶然見つけちまいました。
探さないからな!他のは探さないからな!
↑連結部みーっけ!
この連結部、よく見ると隙間が離れていて板を乗せて連結してますよね。
こういうのはエキスパンションジョイントと言います。
構造物相互を緊結せずに接続することで、熱膨張や収縮、地震による振動に対して、構造物に応力が生じないようにするためのジョイント方式なのであるッ!
みたいなことを、設計の偉いひとが言ってました。
このジョイント方式は、公団赤羽台団地の単身者棟とか、広島市営基町高層アパートでも見られますね。
↑何というアーティスティックなジャングルジム。
配色とといい、フォルムといい、
お洒落ですよ!モダンアートですよ!人工芝ですよ!
住棟連結部にこういうボイド的空間を設けてプレイロットを作る、みたいなのは、
同時代の民間のスキップフロア住棟とかで見たことありますけどね。
そこも確か人工芝。。
よもや公団のツイコリでこれを見るとは思いもせんかったとです。
↑ツイコリからツイコリを見る。
それにしても、屏風のように立ちはだかる高層住棟のかっこいいこと!
大友克洋てんてーが超能力バトルの舞台にしたくなるのも頷けるってもんです。
だから何がてんてーですか。
えらい長い記事になってますけど、もう少しおつきあいくださいね。
さっきの吹き抜けをもう一度見ます。↓
↑これぞ!これぞ僕が探し求めていたビューです。
「童夢」p.76, p.77 の見開き2ページに渡るカットがここだと思います。
何階かまでは分からないし、廊下の幅も広くデフォルメされてますが、
腰壁の形状、ドアと窓の配置、など諸々の特徴から考えて、
ここだと考えて間違いないと思います。
アニメ「中二病でも恋がしたい!」の団地特定の時もそうでしたが、
絵として起こされているものは、どんなに緻密に描かれていても、
絵的にスッキリ見えるように、ディテイルをデフォルメしているということが、
実際に現場に行って調べるとよく分かります。
ただ、そこを勘案した上で特定できるということは、
それだけ、きちんと取材をして団地を描いていることの証左であり、
敬意を抱かずにいられません。
何せ、ここを見つけた時も、
ツイコリ愛好家として僕は、胸が熱く震えましたよ!
はぁはぁ。
真面目なことを一定量以上書くと、息が切れますデス。
↑そしてこのビュー。
ここも、「童夢」p.77 で使われています。
写真は、漫画のコマよりも引きで撮ってますが、
ここをズームアップして下から見上げると一致します。
残念ながら木が邪魔で、同じアングルとズームでは撮れませんでした。
童夢が発表されたのは30年前なので、その頃は木が無かったかもしれません。
↑階数標示までもタイル!
タイル好きの僕としては、胸が熱く震えましたよ!
天丼も3回までにしとけよ。。
他にも、童夢の名シーンの舞台を探そうとしたのですが、完全一致する場所は見つかりませんでした。
たとえば・・・↓
↑ラストでチョウさんとエッちゃんが対峙する、ブランコとベンチ・・・
・・・を想起させる場所。
童夢では、ブランコは3連ですし、ベンチは正対して配置されていて、背景も違います。
この団地では、遊具もベンチも更新されているので、
昔の遊具やベンチがどこにどう配置されていたのかまでは、分かりませんでした。
↑これもイメージです。チョウさんがラストで座っていたベンチ的な。
まあ、これはほんと、全然違うんですけど。
ただ、背景のバルコニーは、
ブランコに乗ったエッちゃんの背景のものと、ディテイルが一致しています。
ここを探すだけでも骨が折れました。。
最後に・・・↓
↑これは「童夢」p.14の真ん中のコマと、p.186の上のコマに出てくるカットと一致しました。
右側の住棟は、最初に紹介した2層ピロティ型のツイコリです。
童夢ではp.186の方が、緻密にディテイルが描かれていました。
こういうのも、絵として起こすときに、どこまでディティルを再現するか、
画面構成を分かりやすくするためにどうデフォルメするか、
とか、センスが問われると思います。
ただ細かくそのまま描けばいいわけじゃないという。
取材力と画力と。
現地に行って、それをまざまざと見せつけられた気がしたのでした。
以上
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