2009年10月9日金曜日

県営高御堂住宅



ツインコリダー数: 2棟
愛知県稲沢市高御堂
昭和47~50年築

いきなり側面のショットから紹介します。
昔、学生服のボンタンなどを変形ズボンと言ったりしましたが、この団地は、ツインコリダーと片廊下型住棟が合体した、いわゆる変形ツインコリダーです。(また勝手に用語を作りましたw)
上の写真を見ると、中央のタワーと左側の住戸棟は、ツインコリダーによくある造形です。
が、右側には強引に片廊下型住棟が連結されています。



↑つまり、こういう形をしているのです。
北側の側面から、ニョキッと片廊下型住棟が突き出ています。
こうすることによって、2つの住棟による囲み配置的な効果を狙ったのかもしれません。
実際、1号棟と2号棟に囲まれたオープンスペースは、開放感を維持しつつ中庭的な雰囲気がありました。
また、ここでは紹介しませんが、この団地にはツインコリダーの他に、羊羹型の中層フラット住棟が8棟もあり、こういう住棟タイプの組み合わせも珍しいと思います。



↑その中庭的なオープンスペースがこれです。
広々としたスペースにシロツメグザが敷き詰められており、遊具もそれなりに充実していました。
ここには写っていませんが、子供がたくさん遊んでおり、古き良き団地の風景を感じました。
団地は、建物が寂れても、子供がたくさんいると健全さと温かみを損なわないと思います。



↑ツインコリダーの吹抜け内部です。
写真では分かりにくいですが、奥に駐輪場があります。
駐輪場と植栽が同居しているのは、ありそうでないと思います。また、目をひくのは、タワーの上層階に設けられた外階段です。屋上か給水タンクへのアクセスのためだとしても、外に階段を付ける意味が分かりません。たまたまそういう設計にしただけと言われればそれまでですが。。

あと、面白いのは、1階部分の廊下と吹抜けスペースの間に境界壁があることです。
つまり、オープンになっておらず、1階住戸から吹抜けへ行くには、住棟の両端からのアクセスに限られるということです。
1階に住戸があるツインコリダーで、これは珍しいと思います。
が、或る部分で理にかなっているようにも思います。例えば、境界壁があることで、雨が降っても吹抜けから1階住戸の玄関に水が来るようなことはありませんし、向かい側からのプライバシーも或る程度保たれます。
が、採光の面では、少し難があるかもしれません。ツインコリダーは、1階が最も暗くなるものですが、吹抜けとの境界をオープンにすることで、横から光を多く取り入れることができます。しかし、境界壁を設けてしまうと、横からの採光が減ってしまい、より暗くなります。
一長一短あるということになりますが、どちらかというと雨水が玄関に来てしまうことの方が嫌なので、境界壁を設ける方がメリットが大きいかもしれません。

あと、上の写真で、片側だけパラボラアンテナが多いのがなぜなのか、気になります。
電波状況の偏りなのか、単なる偶然なのか・・・。



↑ツインコリダーとしては長大な部類に入るので、高層棟と見紛いそうになりますが、実は7階建ての中高層棟なのです。なので、バルコニー側を見ると、中層フラット(羊羹型)住棟の趣きにも似た、団地団地した雰囲気も感じられます。
細長くて高層ではないツインコリダーというのは、珍しいかもしれません。



↑住棟連結部周辺の佇まいです。
なぜだか明確には分からないけれど、僕はこの風景が好きです。
ここに住んだこともなく、ここに似た場所に住んだこともないのに、団地で生まれ育った者として、懐かしさや郷愁にも似た感情が湧き起こり、心を揺さぶられ、また安堵するのです。
コンクリート、貫通した開口部、草木、子供・・・といった要素がイメージとして抽象化され、そういった感情を喚起するのかもしれません。



↑南側面は、とてもマッシヴです。
マッシヴという表現にふさわしい重量感を備え、独特のコンクリートの冷たさを感じます。
この冷たさを得も言われぬ魅力として感じられる僕は、やはりかなりのマニアなのかもしれません。



↑これとか、たまらん!と思ってしまうのは僕だけでしょうか。。。
このコンクリートの質感といい、量感といい、質素且つ静かなる佇まいに、侘び寂びを感じるのです。
僕の美意識に一人で乾杯します(苦笑)。



↑壁面の余白の取り方に、美しさを感じます。
設計した人は、そんなことを狙ったわけではないでしょう。
おそらく、住居としての機能以外に、装飾的な意図はないのだと思います。
でも、意図していないからこそ、素朴さの中に美を見出せるのではないでしょうか。。

以上、県営高御堂住宅でした。