2012年1月28日土曜日

公団尾上団地

名古屋市北区尾上町
ツインコリダー数: 2棟
形状区分: 妻側フラット / 吹き抜けに街灯
供給区分: 公団
築年代: 昭和49~51年
撮影: 2010年5月



結構でかいツインコリダーです。
バルコニーにメタリックな縦の線が多くてかっこいいですね。
こんなにも要らないと思うんだけど、問題ないです。かっこいいから。

では、いつものように、妻側の正規のアングルを見てみましょう。




↑これはサイバーだよね、美しい。
平面上に方眼紙のように四角形が並び、赤い三角形が列を成す。
「神のみぞ知るセカイ」のOPとかに使って欲しいぐらいですね。

ここだけ見れば、ツイコリを規格化したかのようなデザインなのだけど、
他所の団地で全く同じのは無いんだよね。

そこがツイコリに限らず、団地の面白いところ。
規格化されているようで、団地ごとに違う。


では、吹き抜けを見てみましょう。



↑ぬっと立つ街灯。
ツインコリダーの吹き抜けに街灯ってたまにあります。
同じ名古屋市内の公団九番団地とか。

夜になると、両側の廊下の灯りが明るいので、街灯要らないと思うんだけど。
まあ問題はないです。かわいいから。



↑見上げてみた。
腰壁の柵が明るいグリーンなので、ちょっと若草な雰囲気。
クールには違いないのだけど。

そして、縦に並ぶ雨水管は、ツイコリの吹き抜けの醍醐味の一つ。




↑見下ろしてみた。(ニコ動かよ)
いやー、これはかっこいい!
似たようなビューを幾つ撮ってんだって突っ込まれそうだけど、かっこいいものはかっこいいのだ。

ここは色のバランスが絶妙。
よく見ると、上層階と下層階で、柵のグリーンの濃淡が違います。
上はちょい濃いグリーンで、下は薄い若草色。
日本茶のような味わい深さ。

ということは、あのぬっと立つ街灯は茶柱!?そういうこと!?
そう考えたら、この内部空間が、日本茶で満たされた湯呑みの中にしか見えなくなってきた(爆)。

ま、まあ、グリーンの濃淡が違うのは途中で塗料が切れたから、とかそういう身も蓋もない事情ではないと思いたいところです。

ともあれ、吹き抜けの床の黄色の侘び具合いといい、雨水管とのバランスといい、絶妙です。




↑久しぶりに正規のアングルも載せておきましょう。
最近わりと変化球投げてたので、ここらで直球を混ぜたらびっくりしてバット振って打球が詰まるに違いない。(ノムさんかよ)

しかしまあ、このカラーは新鮮です。他にない。
お茶の中にいる気分になります。カテキン入りで清潔、みたいな。




↑すばらしい。
住宅都市整備公団(住都公団)時代の聖遺物、アーティファクトです。
コンクリを住棟の形にへこましただけで配置を表す案内盤です。

どれが何棟とかどこが入り口とか問題じゃないです。
現在地は、住棟の形と向きから推測しなさいってことです。

いやひょっとすると、昔はへこんだところに住棟を模した立体オブジェでもあったのかな。。

ともあれ、このへこみでコンニャクとか作りたくなりますね。
いや名古屋だから、ういろうがいいかも。




↑さっきと別の棟に来てみた。
形状は同じだけど、こっちの方が古いっぽい。向こうは大規模修繕が入ったのかも。

それにしても、どーんとマッシヴなツイコリの量感はすばらしいですね。


こっちの吹き抜けも見てみましょう。



↑えっ。
さっきのと違う!街灯低いし、この床の幾何学的なカラーリングは何?
急にファンキーになったぜベイベー。
アフロでパンタロンでモンキーダンス踊りたくなったぜベイベー。

で、ここのカラーリングで凄いと思うところがあるんだけど、どこだか分かります?





↑ここ!
床と壁でわざわざ色をつなげているという。

この壁んとこは、実は保育園になっていて、子供に配慮したカラーリングなんだと思います。
アンパンマン的な塗りじゃなくて、前衛的なところがツイコリらしくてすてき。

あ、でもこれ、絶対子供はジグザグに走りまわったりするよね。
そういう遊び心を刺激するデザインということか。ほんとかよ。




↑こっちも見上げてみた。
柵のグリーンが濃い!こっちは森のような佇まい。

とにかくグリーンというのが珍しいです。
ここのカラーリング全般を考えた人の普段着の色とか気になります。




↑お約束のクールビュー。
静謐と寂寥感を湛えた別世界。




↑ここにも住都公団時代の聖遺物(アーティファクト)が。
住都公団の紋章、カモちゃんズをあしらったキューブ。ほしい!

あと、喫茶道化師が気になって仕方なかったのですが、時間の都合で立ち寄れませんでした。


というわけで、クールな外観と内部のカラーリングで魅せる、公団尾上団地のツイコリでした。


以上。

2012年1月24日火曜日

府営原山台五丁住宅

大阪府堺市南区原山台
ツインコリダー数: 1棟
形状区分: 両面ピット
供給区分: 府営
築年代: 昭和49~51年
撮影: 2010年3月



今回は、色即是空寂寞系です。

中層住棟に囲まれるようにして建つツインコリダー型住棟です。
中層とツイコリが併存する団地は、まあ少ない方ですが、あるにはあります。

ただ、ここの特徴をあえて言うならば、大阪府営なのにスキッププロア型ツイコリじゃないというところでしょう。
大阪府営のツイコリはなぜかスキッププロア型のツイコリが多いのです。
百舌鳥梅町、堺戎島、摂津南別府、岸部第一・・・etc.
ここだけが、スキップフロアじゃないという。

だから何なんだと自分でも思いますが、まあそういうことで。




↑それにしても凄い存在感ですね。
このツイコリは、ちょっと遠目から見るのもツウです。
っていうか、近くからはあんまり全景を見られないからね。



↑道を隔てた向かいには、スキップフロア型の住棟もあります。
あれはあれでかっこいいけど、今回は構わないでそっとしておきましょう。

では、いつものようにツイコリを妻側から見てみましょう。



↑どーん。さすがは府営。
装飾性、デザイン性というものが一切ありません。
ちょっとここをオサレにしようとか、そういう気が端からないのでしょう。
だが、それがいい!

1階のアプローチ部分も見てみましょう。



↑ハラショー!
思わずロシア語で叫んでしまうほどの質素さです。

あえて1つだけデザイン性のある箇所を挙げるならば、
スロープの右のコンクリ塀に、段差が1段設けられていることぐらいでしょうか。

ええっ!?そこデザインなの!?

と突っ込まれそうですが、ひょっとしたら花壇的な何かなのかもしれません。

軒が緑色に塗られて褪せていることもデザインと言いたいぐらい、それぐらい質素です。
余計なものが何もないことの素晴らしさよ。

いや、デザインや装飾が一般的に不要だと言うわけじゃないけれども、
それはそれ、これはこれ。



↑かっこいい!
ほらね、装飾性を排除してるからこそ、このかっこよさが成立するのだ。

例えば、ピットのコーナーに下手にアールなんか付けたのを想像してみたまえ。
ダッサダサになるでしょ。ゴミ捨て場のゴミ収納ケースみたいになるでしょ。浮かれポンチな感じになるでしょ。

だから、このツイコリはこれでいいのだ。
こうするのがストイックでかっこいい。

えらそうにすみません。



↑質感が素晴らしい。
エアブラシを使っても、なかなかこれほど味のある質感は出せないですよ。
と、プラモ少年みたいなことを言ってみたくなるぐらいです。

それにしても、良い寂寥感です。

では、住棟内部の吹き抜けを見てみましょう。



↑何という無造作な枯山水。
これほどなのか!これほどなのか!と二度つぶやくほどの寂寥感。
どうしたいのか、全く分からない!

この柵に囲まれた枯れきった異次元空間を前にして、
僕は己の無力さに打ちのめされそうになりました。

美とは何なのか。
思考と感性が抱き合いながら渦を巻いて、白砂ならぬ灰砂が具象する淀んだ水面に呑み込まれていくのを、僕はただ傍観することしかできないでゐるのでした。




↑高く積み上がった階層に光が差す。
もう、咎狗の血とかに出て来そうなかっこよさですよね。




↑1階ピロティには、プレイロットもあったりして。
寂寥感を損なわない、これ以上ないシンプルさ。

座って休憩するためのものかもしれないけど、
だったら長椅子的なベンチを作るでしょう、常考。

タイルのカラーリングも渋くてすてき。
閉鎖空間内における統合思念体の集会所みたいですよね。
(何だよそのたとえは。)

まあ、野放しにしておくと、何でもすてきと言いかねない僕ですが。




↑何という律儀さ。
たった1段の階段にも手すりをつけるという、予算を使いきらねばという公共事業的な事情バリアフリー化できなかったことへ少しでも報いようという涙ぐましい意図の表れでしょうか。
意地でもこの手すりを使いたくなりますよね。

それはそれとして、これは景色として好きです。




↑府営団地特有のいわゆる「囲み型住棟配置」を上から見ることができます。
駐車場化されたエリアも見えますが、プレイロットが広く残っていることが嬉しいです。
ビバ!建て増し!


というわけで、 色即是空寂寞系ツインコリダーを擁する、府営原山台五丁住宅でした。


以上。


2012年1月17日火曜日

都営西台アパート&都公社西台住宅

東京都板橋区高島平
ツインコリダー数: 4棟
形状区分: 両面ピット / 人工地盤
供給区分: 都営 / 公社
築年代: 昭和45年(都営), 昭和48年(公社)
撮影: 2011年9月



↑右3棟が都営西台アパート、一番左端が都公社西台住宅です。

いわゆる、西台団地のツイコリ群です。
ツイコリが4棟並ぶ団地ってのも、ありそうでないです。
他にパッと思いつくのは、大阪市営新北島住宅ぐらいでしょうかね。
まるでツイコリの基地ですね。

ここが特異なのは、4棟全ての妻側のデザインが異なるところです。
上の写真を見てもらうと分かるかと思いますが、全く表情が違います。

さらにここが凄いのは、1階が電車の車庫ってところです。

まあ、下の写真を見たまえ。(えらそうに)



↑天は人の上に人を作らず、車庫の上にツイコリを作りたもうたわけで。
いや、ツイコリの下に車庫を作ったと言いたい。(違うけど)

人工地盤の下に車庫、上にツイコリ。
こんなにブッ飛んだツイコリはここしかないでしょう。



↑人工地盤の下には、電車さん大集合です。



↑電車電車電車電車電車電車電車電車電車電車電車電車。
セガールが好きそうな光景です。




↑その電車さん達の上に、これが屹立してるわけです。
妻側壁面の突起物(おでき)といい、レンガ調タイルといい、二度折れ曲がる優美
な柱といい、見目麗しきこの素晴らしいツイコリは、都公社西台住宅です。



↑当たり前のように庭がありますが、全てが人工地盤の上にあります。
それにしても、西台のツイコリはバルコニー面のフォルムが美しいです。




↑もう一つ、ここの特徴は、2階(人工地盤上の1階)の平面構成の巧みさです。
人工地盤上に4棟もツイコリがあるので、各棟の2階をピロティにすることで、
人の平面移動をスムーズにしているのです。たぶん。




↑ブリッジがあったりしますが、ずーっと奥までくぐり抜けられます。
見通しが気持ちいいのは大事。

遠近感の楽しめる、かっこいい空間構成なのだ!




↑巨大な住棟の2階(人工地盤上の1階)も、ズドーンと広いピロティに。
遊具があったりなんかして、有効にスペースが使われています。

ほんと、全てがグッとくるんだよね。




↑ほれぼれする美しい立面。
これね、何でここまでキュンキュン萌えるのかというと、都営なのに公団の初期型
久米設計ツイコリ(昭和43年・公団金町駅前団地 / 昭和44年・公団大島四丁目団地)に、バルコニー面がどことなく似ているからなんだよね。

この都営西台アパートが昭和45年築だから、時代的にはとても近いわけで、どこが設計したのか知りたいところ・・・。


足元で外側にスッとひろがる柱といい、碁盤目状にベランダと窓が並ぶ立面といい、
典型的な初期型ツイコリのデザインは、大好きです。



↑西端の8号棟は、外壁補修のためか足場が組まれていました。
足場ファンにはたまらない、壮観な眺めですよー。
全国に足場ファンがどのぐらいいるのか知らないけども。。



↑足場を装備したツイコリ、かっけー!
やばいです、足場かっこいいです。




↑「ザ・都営」なピットも、美しい縦横比とディテイルのパターンを持ってますね。




↑内部の吹き抜けですが、右の廊下は改修のために幕が張られています。
これはこれでレアな眺めです。




↑なんと内側にまで台形フォルムの柱が列を成していました。
かっこいい廊下です。(写真をクリックして拡大して見ると伝わりやすいかと)





というわけで、ツイコリ好きにはたまらない聖地的な西台団地なのですが、
このときは見る時間があまりなかったので、また再訪して報告したいと思います。


以上。

2012年1月9日月曜日

市営山科住宅

京都市山科区西野様子見町
ツインコリダー数: 2棟
形状区分: 両面ピット / 渡り廊下
供給区分: 市営
築年代: 昭和46~47年




外観はマッシヴ、内側はクール。
というのが、このツイコリの特徴です。

つまり、どこを見ても鑑賞的価値が高いということです。

まずは、外観をバシッと見てみましょう。




↑んんー、マッシヴ。(マンダムじゃないよ)
この存在感はただ者じゃないですよね。
三国志で例えると張遼ぐらいの存在感はありますよね。

山に囲まれた平地にドーンと佇むツイコリが2棟。
こいつぁー目立ちますぜ、旦那。

では、いつものように妻側を寄って見てみましょう。




↑ドーン!さすが張遼!(まだ言うか)

この妻側の何が良いかって、削り出したような壁面のコンクリの質感ですよ!
よく見ると、塗り込めたような凹凸があって、絶妙な寂寥感の中に明るさを湛えた、
もののあはれを感じずにはいられない壁面ではないかっ。

そして、壁面に影を落とす、ワイヤーフレームの住棟番号「1」。
「1」というのはただの縦棒、つまり究極のシンプル、侘びの極致を行く造形です。
ともすれば見落としてしまいそうな地味で素っ気ない佇まいが、美とは何かを教えてくれているような気がしてなりません。

アホみたいな話ですが、半分本気です。
(もう半分はふざけてるのかよ)

さらに、コーナーを面取りしたメタリックなピットが超クールなのですが、
そこはさらに寄って見ましょう。



↑かっこいいですね。
コーナーが面取りしてあるだけでピットの表情が豊かになるという好例です。
さらに、腰壁の材質が光沢のある網目状の金属なので、メタリックかつ透明度があり、渡り廊下から空が透けて見えて、何とも言えない味を醸しています。

一言で言うと、「た・ま・ら・ん!」 というやつですね。




↑美しいですね。
つや消しのメタリック素材には渋く、コーナーの窓には鮮やかに、空が映り込みます。




↑ちょうクール!
配管萌えの僕としてはたまらないものがあります。
メタリックな配管は後付けのものが多く、付き方によっては興ざめなものもあるのですが、無駄なく二度直角に折れ曲がるこれは秀逸です。

では、吹き抜け内を見てみましょう。




↑渡り廊下型の良いところは、1階がオープンになって採光が多くなるところですね。
レンガの道を敷き、下手に樹木などを植えず、すっきりさせているのも良いです。



↑上から見ても、明るくて開放感があります。
半透明な渡り廊下が、閉塞感を出さないように効果を発揮しています。




↑自転車、傘、鉢植え・・・と、メタリックで無機質な廊下に生活を感じさせるアイテムが
点在しています。
この無機と有機のコントラストも、ツイコリの醍醐味です。




↑おなじみのビューも、一味違う、メタリック風味。
タケヤ味噌かよ。




↑Stylish!(デビルメイクライかよ)
下から見上げたときの静謐とクールさといったら、夏の厚さも吹き飛びます。
全てが人工物の寂寥たる世界で、空が唯一の自然の色彩だとすれば、
空は即ち色、色は即ち空。色即是空、空即是色・・・。
ツイコリの吹き抜けに、禅的空間を僕は感じます。(まじめかよ)

実際、7月に行ったときの写真ですが、涼しかったですよー。

ツイコリの吹き抜けというのは、特に1階がピロティになっている場合、
風が通り抜けて日差しは直接届かないので、洞窟のような効果になって涼しいのです。
これは、幾つものツイコリに足を運んで感じていることなので、間違いないです。




↑この網目状(プレートに穴が多数あるタイプ)腰壁は、なかなか良いです。
廊下に明るさを確保しつつも、下が見えないので高所が苦手な人でも怖くなさそうです。
そして何よりメタリックでかっこいい!
この長い廊下も壮観です。

というわけで、外観はマッシヴ、内側はクールな市営山科住宅でした。

以上。