2013年6月9日日曜日

市営榎木荘

名古屋市千種区千代田橋
ツインコリダー数: 1棟
形状区分: スターツインコリダー
供給区分: 市営
築年代: 昭和51年
撮影: 2011年3月



この住棟はスターツインコリダー、略してスタコリですよ。
スタコリ自体がかなりレアなんですけども、ここのは全国屈指の美しさを誇るスタコリだと思います。

何が凄いかってまず、この正面から引きのアングルで見られることが!
前にグラウンドがあるとか何て素敵なロケーション!

ただ、この日は野球の試合が行われていたので、
金網越しの撮影になってしまい、左下に金網が写りこんでしまいました。
レンズの口径の方が金網の目より大きいのでしゃーなしですね。

あと凄いのは、亀梨和也さん主演の映画「俺俺」のロケ地だということ。
いや、映画まだ見てないんですけども、これ書けばPV増えるかなーと思って

ごほん!
うおっほん!(咳払いで有耶無耶にしました

えっと、今日はこのスタコリの素晴らしさを存分にご紹介させていただきますねっ。


さて、と。(何がさて、とだ!)
スタコリがピンと来ないひと(ほとんどそうだろうよ)のために、グーグル先生の航空写真を見てみましょう。↓




↑上から見ても見事なスタコリですね。
Y字形(スターハウス)で尚且つツインコリダー、それがスターツインコリダー。

で、ですよ。
ある事実に気がつきまして。

住棟配置が、南北軸に対して斜め向きなんです。
ツイコリ部分の部屋の向きで言うと西北西と東南東。

それがどうした!って、言われそうですが、
これ実はレアなんです。

ツイコリの住棟配置は、南北軸配置(部屋の向きで言うと東西向き)が原則なんです。
原則って僕が勝手に言ってるだけですが、公団・公社・公営のツイコリはほとんど南北軸配置。

東西軸配置のツイコリが民間以外で存在しないのは、北向きの部屋をなくすためですたぶん。
だから、基本、ツイコリは南北を軸にして、部屋を西向きと東向きに作ります。

ところが、この市営榎木荘はちょっと斜めになってる!

何で!?

と思って、航空写真を広範囲で見てみると、あることに気づきました。(というか思いつきました)


↑団地の敷地の形に注目!↓


↑縦横の幹線道路(赤線)が斜めに走っていて、敷地(緑色枠)が斜めのグリッドに規定されてるわけです。
だから、面積にロスのないように建物を建てると、斜めになると。

で、面白いのは、市営榎木荘の左側にある、公団大幸東団地(水色枠、縦に長いツイコリがある)。
ここも、敷地の向きは斜めなんですが、ツイコリ住棟の向きは真っ直ぐ。南北軸配置。
これはもう、公団のこだわりだと思います。あくまでも、ツイコリは南北軸配置だと。

あと、余談ですが、
川の北側と南側で土地の地割りのグリッドが違うのも面白いです。

川の北側は、もう1本細い水路(青い線)が走っていて、それに直交する向きで地割りができています
元は水路を中心とした耕作地で、そのグリッドに沿って家が建っていったのかなと、
CAPOは勝手に推測してみます。
(この発想は、住宅都市整理公団総裁・大山さんの研究から影響を受けていますが、考え方とか僕の理解不足で間違ってたらすみません。)

脱線しました。

さあ、ツイコリに戻りましょう!



↑北側からのアングル。かっこいい!





↑両手をいっぱい広げて、包容力すら感じさせてくれます。
さあ、私の胸に飛び込んで来なさい!的な。





↑ 胸に飛び込んでみました。すてき!

何がすてきかって、この細かいタイルがですよ!
微妙に色が違う同系色のタイルがモザイク状に貼られていて、クールです。

なかなか公営でこのクオリティは無いのですが、
さすがは名古屋市営。




↑ツイコリ部分妻側のアプローチ。

丸い階段の両側にアールのついたスロープ。
スロープに折り返しがないので、車椅子の人とかは便利かも。
いや、便利なのか!?

でもまあ、純粋に形として面白いですよね。
だって、角ばった建物にいきなり丸っこいアプローチ。
なんか、ヘンテコに見えてきます。良い意味で。

デザインと機能性を両方そこそこ重視した結果こうなった、みたいな。

この両サイドにラウンドスロープのあるアプローチは、他の名古屋市営のツイコリにもあります。
パッと思いつくのは、市営南新開荘ですね。



↑そして、見上げれば絶景。このリズム感よ!
それにしてもこの良いタイル、どんだけ面積あるんだ!


で、まだまだ見どころいっぱいあります。
内部を見てみましょう。



↑吹き抜けはまず、見上げてナンボですよね。
しっかりクールなツイコリです。(説明する気ないだろアンタ...)





↑無駄に広いエントランス。

というか、そもそもY字型の住棟には必ず真ん中にこの空間があります。
中層のスターハウスの場合は、三角形の螺旋階段がそれです。
ここみたいに巨大な住棟だと、こんなに広くなるというわけ!(ドヤァ)

いやそこでドヤ顔されましても。




↑同じ場所の別アングル。奥に続く通路がかっこいい!ダンジョンみたい!




↑見上げると、不思議な形の天井が。
2枚の板を中央で貼り合わせたような感じで、面白いです。
この方が強度が出るのかなー。
ちょっとギターのボディ材の接合方法に似てる...

右上のスリットから光が横に入るのもかっこいいです。

中層だと、最上階まで階段室の吹き抜けになってますが、
高層なので、5階に踊り場的なフロアを設けて、さらにまたその上が吹き抜けになってます。
(エレベータは各階停まりなので、踊り場だけがスキッププロアです)



↑最上階付近。わくわくする空間構成だ!
見ての通り、Y字の中央スペースに踊り場がある階と無い階があるということです。





↑連結部の渡り廊下。かっけー!
水平方向に見通しのいいスリットがたまらん。
って、安全上の理由で腰壁を高くしたらこうなったのだろうけど、マジかっこいいです。 




↑そしてルーバー。
可動式じゃないけどかっこいいルーバー。
そして赤い階数標示かわいいよかわいい。

名古屋市営のツイコリは、妻側にルーバーがあることが多い(逆に他所では見かけない)のだけど、
サイズとか材質とかいちいち違っててすごいです。

って、この知識は誰得なのか。





↑え、何この隅っこ!ちょう好き!

ぼっちにはたまらんスポットだ!
ここで一日中穏やかに過ごしたい。

でまた、この光の入り方が心憎いんだよね。
日陰も日なたも堪能できる。





↑当然、正規ビューも押さえますとも。

何が良いって、中央の窓!
階段室の窓なんですが、真ん中じゃなくてちょっと寄ってるのがイイ。
まあ、こうなってることが多いんですが、何度見てもすてきです。




↑上から目線でも下から目線でもなく。
どうよ、この存在感。すてきだー!

というわけで、スタコリならではの魅力たっぷりの市営榎木荘なのでした。


以上。


2013/10/3追記:
ルーバーは可動式だという情報を頂きました。(コメント欄参照)