大阪府堺市南区原山台
ツインコリダー数: 1棟
形状区分: 両面ピット
供給区分: 府営
築年代: 昭和49~51年
撮影: 2010年3月
今回は、色即是空寂寞系です。
中層住棟に囲まれるようにして建つツインコリダー型住棟です。
中層とツイコリが併存する団地は、まあ少ない方ですが、あるにはあります。
ただ、ここの特徴をあえて言うならば、大阪府営なのにスキッププロア型ツイコリじゃないというところでしょう。
大阪府営のツイコリはなぜかスキッププロア型のツイコリが多いのです。
ここだけが、スキップフロアじゃないという。
だから何なんだと自分でも思いますが、まあそういうことで。
↑それにしても凄い存在感ですね。
このツイコリは、ちょっと遠目から見るのもツウです。
っていうか、近くからはあんまり全景を見られないからね。
↑道を隔てた向かいには、スキップフロア型の住棟もあります。
あれはあれでかっこいいけど、今回は構わないでそっとしておきましょう。
では、いつものようにツイコリを妻側から見てみましょう。
↑どーん。さすがは府営。
装飾性、デザイン性というものが一切ありません。
ちょっとここをオサレにしようとか、そういう気が端からないのでしょう。
だが、それがいい!
1階のアプローチ部分も見てみましょう。
↑ハラショー!
思わずロシア語で叫んでしまうほどの質素さです。
あえて1つだけデザイン性のある箇所を挙げるならば、
スロープの右のコンクリ塀に、段差が1段設けられていることぐらいでしょうか。
ええっ!?そこデザインなの!?
と突っ込まれそうですが、ひょっとしたら花壇的な何かなのかもしれません。
軒が緑色に塗られて褪せていることもデザインと言いたいぐらい、それぐらい質素です。
余計なものが何もないことの素晴らしさよ。
いや、デザインや装飾が一般的に不要だと言うわけじゃないけれども、
それはそれ、これはこれ。
↑かっこいい!
ほらね、装飾性を排除してるからこそ、このかっこよさが成立するのだ。
例えば、ピットのコーナーに下手にアールなんか付けたのを想像してみたまえ。
ダッサダサになるでしょ。ゴミ捨て場のゴミ収納ケースみたいになるでしょ。浮かれポンチな感じになるでしょ。
だから、このツイコリはこれでいいのだ。
こうするのがストイックでかっこいい。
えらそうにすみません。
↑質感が素晴らしい。
エアブラシを使っても、なかなかこれほど味のある質感は出せないですよ。
と、プラモ少年みたいなことを言ってみたくなるぐらいです。
それにしても、良い寂寥感です。
では、住棟内部の吹き抜けを見てみましょう。
↑何という無造作な枯山水。
これほどなのか!これほどなのか!と二度つぶやくほどの寂寥感。
どうしたいのか、全く分からない!
この柵に囲まれた枯れきった異次元空間を前にして、
僕は己の無力さに打ちのめされそうになりました。
美とは何なのか。
思考と感性が抱き合いながら渦を巻いて、白砂ならぬ灰砂が具象する淀んだ水面に呑み込まれていくのを、僕はただ傍観することしかできないでゐるのでした。
↑高く積み上がった階層に光が差す。
もう、咎狗の血とかに出て来そうなかっこよさですよね。
↑1階ピロティには、プレイロットもあったりして。
寂寥感を損なわない、これ以上ないシンプルさ。
座って休憩するためのものかもしれないけど、
だったら長椅子的なベンチを作るでしょう、常考。
タイルのカラーリングも渋くてすてき。
閉鎖空間内における統合思念体の集会所みたいですよね。
(何だよそのたとえは。)
まあ、野放しにしておくと、何でもすてきと言いかねない僕ですが。
↑何という律儀さ。
たった1段の階段にも手すりをつけるという、予算を使いきらねばという公共事業的な事情バリアフリー化できなかったことへ少しでも報いようという涙ぐましい意図の表れでしょうか。
意地でもこの手すりを使いたくなりますよね。
それはそれとして、これは景色として好きです。
↑府営団地特有のいわゆる「囲み型住棟配置」を上から見ることができます。
駐車場化されたエリアも見えますが、プレイロットが広く残っていることが嬉しいです。
ビバ!建て増し!
というわけで、 色即是空寂寞系ツインコリダーを擁する、府営原山台五丁住宅でした。
以上。
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